”自力”を見せたイングランドが2大会連続で決勝進出を果たした。立ち上がりの7分に均衡が破れる。ライスからボールを奪ったシャビ・シモンズが自らボールを持ち運び、ボックス内手前から右足を振り抜き、ゴラッソを決める。イングランドも14分、ピッチ中央付近で縦パスを引き出したベリンガムが反転から前を向き、前線へボールを繋ぐと、ケインが右サイドへ展開。得意の位置でボールを受けたサカはカットインから左足を振り抜くも、ここはブロックされる。こぼれ球に反応したケインが右足で強烈なシュートを放つも、ここは枠を外れた。しかし、このケインがシュートを放ったプレーにてARが介入。ケインのシュートに対して、やや遅れてタックルに入ったダンフリースのファウルが確認され、イングランドにPKが与えられる。このPKをケインがゴール左下に蹴り込み、イングランド代表が試合を振り出しに戻した。後半に入ると、ベグホルストを投入し、ターゲットを設定。後半の立ち上がりはオランダのペースで試合が進行するも、なかなか決定機は作り出せない。延長戦突入の気配も漂うなか、サウスゲート監督が動く。81分にフォーデンとエースのケインを下げて、パルマーとワトキンスを投入。すると後半AT、この2人が試合を決める。90+1分、敵陣右サイドでボールを受けたパルマーが、ボックス内へボールを入れると、デ・フライにマークをされながらボールを受けたワトキンスが、反転から思い切りよく右足を振り抜き、ゴールを奪う。“伏兵”の一撃でイングランド代表が土壇場で勝ち越しに成功した。イングランドは、今大会のパフォーマンスは批判の的となっていたものの、気がつけば2大会連続の決勝進出。またしても”自力”の違いを見せつけた。決勝の相手はスペインだが、圧倒的不利なのは揺るがない。サウスゲイト監督の対スペイン用の戦術に注目が集まる。
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【セミファイナル】 オランダ×イングランド(ジグナル・イドゥナ・パルク)
1 ー 2
[得]
(オ)
7” シャビ・シモンズ
(イ)
18” ケイン②(PK)
90” +1 ワトキンス
【採点】(0~10の20段階評価。最低点は0。最高点は10。)
GK
1 フェルブルッヘン 6・5
いくつか好セーブを見せ、高いキック精度でビルドアップにも貢献していた。
DF
22 ダンフリース 6・5 (■17分)(90分+3→交代)
14分にPkを与えたファウルは致し方ない。23分にはゴールラインぎりぎりでスーパークリアを達成。30分にはCKからの制空権を勝ち取ったヘディングシュートはバーに嫌われた。忙しい一日だったが、ダイナミックなプレーで攻守で存在感を放っていた。
→ 21 ザークツィー ー (90分+3→出場)
6 デ・フライ 6
ケインとベリンガムに対して粘り強い守備を見せていた。最後の最後にワトキンスのスキルに敗北した。
4 ファン・ダイク 6・5 (■87分)
守備ではポジショニングの秀逸さが光り、危険を回避していた。65分にはフェールマンのFKに左足で合わせるも、ピックフォードに阻まれた。
5 アケ 6
サカには球際で闘い、ウォーカーには侵入をケア。守備では高いパフォーマンスを披露したが、攻撃の貢献度は低かった。
MF
24 スハウテン 6
鋭いボール奪取能力を披露。組み立てでもリズムを与えるボールを供給していた。
14 ラインデルス 6・5
多彩なプレーを駆使し、ボールを前線に運び続けていた。84分には自ら左サイドをドリブルで持ち上がり、決定機を創出した。
7 シャビ・シモンズ 7(90分+3→交代)
ライスからボールを奪い、独力で決めた先制点はゴラッソ。球際で戦いつつ、チャンスに何度か絡んだ。
→19 ブロビー ー(90分+3→出場)
FW
18 マレン 5(46分→交代)
守備に追われ体力を消耗。攻撃の唯一の見せ場もグエヒに封殺された。
→9 ベグホルスト 6・5 (46分→出場)
ターゲットとなり、チームの攻撃を明晰化。しっかりボールを抑え、自身の役割はこなした。
10 デパイ 5(35分→交代)
良いところが全くないまま、35分に負傷交代を余儀なくされた。
→16 フェールマン 6・5(35分→出場)
彼の投入により、中盤が強化され、オランダはペースを握った。采配の妙だっただろう。質の高いプレーでポゼッションに貢献していた。
11 ガクポ 6 (84分→交代)
ウォーカーとサカの包囲網により、これまでのようなプレーは披露できなかった。それでも、左サイドから良質のクロスを何度かボックス内に供給。
GK
1 ピックフォード 6
反応が遅れる場面もあったが、65分のファン・ダイクのシュートをしっかり止めた。
DF
2 ウォーカー 6・5
先制ゴールの対応はやや問題があったが、それ以降は屈強な守備を見せていた。ガクポにカットインをさせなかった守備は、この試合において重要な意味をもたらしていた。
5 ストーンズ 6
タイトな守備でベグホルストに決定的な働きはさせなかった。ビルドアップではボールを確実に保持し、リスクを冒さなかった。
6 グエヒ 6・5
マーレンを物ともせず、対処。ストーンズと連携しベグホルストにも、堅実で落ち着いた対応を見せていた。
MF
7 サカ 6(90分+3→交代)
前半は攻撃で見せ場もあったが、後半はガクポへの対応により、自陣でのプレーが目立っていた。
→14 コンサー ー(90分+3→出場)
26 メイヌー 7(90分+3→交代)
攻守でインテリジェンスあふれるプレーを披露。対人プレーの強さと広範囲を守れる守備能力が光るなか、そのまま狡猾にボールを前線に運び、ポゼッションにも大きく貢献した。
→16 ギャラガー ー(90分+3→出場)
4 ライス 5・5
先制ゴールのきっかけになったシャビ・シモンズにボールを奪われたシーンは軽率だったか。組み立ても落ち着きがなかったが、技術で追いつかない部分をフィジカルで埋めていた印象。激しい球際のプレーでチームを鼓舞していた。
12 トリッピアー 6 (46分→交代)
攻撃参加から高精度のパスを供給。崩しに関与していたが、前半でピッチを退いた。
→3 ルーク・ショー 6 (46分→出場)
及第点。攻守で存在感を放っていた。
11 フォーデン 7 (80分→交代)
前半から相手の中盤の底から動き出し、スペースを見つけていた。良いかたちでボールを受け、のびのびとプレー。32分に良いかたちから放ったミドルシュートはポストに嫌われた。
→24 パーマー 6・5 (80分→出場)
精度の高い縦パスで決勝ゴールの起点となった。
10 ベリンガム 5
見るべき部分はキープ力だけであり、フォーデンと比べると”違い”を生み出せていなかった。
FW
9 ケイン 6・5 (81分→交代)
14分に決定機の起点となり、フィニッシュの際にPKを誘発。サイドに流れてボールを受け、サイドチェンジや相手ボックス内に放り込む精度の高いキックを披露。後半は、存在感が希薄だった。
→19 ワトキンス 8(81分→出場)
今季のプレミアリーグで19ゴールを決め、アストン・ヴィラの来季チャンピオンズリーグ出場権獲得の立役者となった男は、芸術的な反転でデ・フライを交わし、角度のないところからシュートを突き刺す値千金の決勝ゴールを挙げた。イングランドをベルリンへ導く、歴史的なゴラッソとなった。