2大会ぶりの欧州制覇を目指すポルトガルとEURO2000以来の本大会出場にして初の決勝トーナメント進出を果たしたスロベニアの一戦は、ポゼッションで優位に立つポルトガルと堅守でしのぎ、カウンターを狙うスロベニアという図式。ポルトガルはヴィティーニャやカンセロが起点となり、スロベニアを押し込み続けるが、強固な守備ブロックを崩せない。スロベニアは守っているばかりでなく、カウンターからシェシュコが何度か決定機を迎えるも決めきれない。このままスコアレスドローで試合は延長戦に突入。一進一退の攻防が続くなかで迎えた103分、ボックス内で仕掛けたジョッタが相手DFに倒されポルトガルがPKを獲得。キッカーはもちろんロナウド。しかし、ゴール右隅を狙ったキックはコースを読み切ったGKオブラクにセーブされてしまう。ポルトガルは嫌なムードのまま120分間が終了し、決着はPK戦に委ねられることとなった。PK戦ではポルトガルのGKディオゴ・コスタが驚異の3本連続セーブ。ポルトガルが3-0でPK戦を制した。ポルトガルは準々決勝でフランス代表と対戦するが、このままでは勝機はない。ロナウドへの固執を振り切れるか、指揮官の采配に注目が集まる。敗れたスロベニアだが、マティアス・ケク監督の下、組織的なサッカーが完成されており、強豪とも互角以上に戦えることを証明した。スロベニアサッカーの歴史において、記念すべき大会となったはずだ。
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【ラウンド16】 ポルトガル×スロベニア (コメルツバンク・アレーナ)
0 ー 0
EX
(前半 0 ー 0)
(後半 0 ー 0)
penalty kicks
(3-0)
(ポ)
7 ロナウド 〇
8 ブルーノ・フェルナンデス 〇
10 ベルナルド・シウバ 〇
(ス)
26 イリチッチ ×
3 バルコヴェツ ×
7 ヴェルビッチ ×
【採点】(0~10の20段階評価。最低点は0。最高点は10。)
GK
22 ディオゴ・コスタ 9 MVP
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試合を通して安定していた。115分にはぺぺのミスを拾ったシェシュコと1対1となったがスーパーセーブでストップ。PK戦では驚異の3本連続セーブと、文字通りポルトガルの救世主となった。
DF
20 カンセロ 6 (■107分)(117分→交代)
46分には相手ボックス内に侵入し、チャンスメイク。攻撃の起点となっていた。対峙する相手の左サイドバックのバルコヴェツは、出場停止のヤンジャほどスピードがなかったので、カンセロに分があった。指揮官はここのミスマッチをもっと生かすべきだったのではないだろうか。94分のボールロストは極めて軽率だった。
→2 ネウソン・セメド ー (117分→出場)
4 ルベン・ディアス 6・5
安定した守備を披露。危険地帯に顔を出し、要所を締めた。
3 ペペ 6 (117分→交代)
スポラルを完封。ビルドアップも含め非常に安定していたが、延長後半には足元がおぼつかず相手にGKと1対1のチャンスを与えてしまった。ここはディオゴ・コスタに助けられた。
→18 ルベン・ネベス ー (117分→出場)
19 メンデス 6・5
前半、彼のスピードと推進力はスロベニアの脅威になっていた。スロベニアが立て直して以降は、攻撃での活躍が制限されたが、試合を通して攻守で存在感を発揮していた。
MF
6 パリーニャ 6
組み立ては凡庸ながら、相手のカウンターをきびしくケアし、強度を落としていた。
23 ヴィチーニャ 7 (65分→交代)
ルーレットを見せるなどテクニカルにボールを前線に運び、多彩なタクトを揮っていた。ゲームを動かしていた彼に対しての指揮者の途中交代の意図は理解に苦しむ。
→21 ディオゴ・ジョッタ 7 (65分→出場)
チームに推進力を与えボールを前線に持ち運んだ。PK奪取など印象的な活躍ぶりだった。
8 ブルーノ・フェルナンデス 5
パスを横に散らすか後ろに戻すだけのゲームメイクは「退屈」そのもの。低調なパフォーマンスだった。
FW
10 ベルナルド・シウバ 4・5
いつもより動きの量と質ともに悪く、後半以降は試合から消えていた印象すらある。
17 レオン 5 (76分→交代)
前半は得意のドリブルでボックス内左ポケットへ持ち込み、折り返すプレーが効いていた。しかし、時間の経過とともに存在感が希薄になっていった。
→26 コンセイソン 5・5 (76分→出場)
ボールの受け方や持ち方は良質。フィニッシュワークの精度を大きく欠いた。
7 ロナウド 3・5
PK戦でPKを決めた以外、チームに利益を与えられなかった。崩しの局面では利己的なプレーを幾度となく相手に刈られ、フリーキックを蹴り、すべて外した後、延長戦のPKではオブラクに止められた。PK戦で負けていたら指揮官のクビは間違いなく飛んでいただろう。
GK
1 オブラク 8
簡単に止めているようでビッグセーブが何度かあった。ロナウドのPKセーブもあり、スロベニアが勝利していればMVPだった。
2 カルニチニク 7(■37分)
リーチの長いタックルで球際で奮闘。後半はレオンに全く仕事をさせなかった。120分間を通して高いパフォーマンスだった。
21ドルクシッチ 7 (■32分)
序盤にロナウドとのエアバトルに勝利した鉄人は、アグレッシブな肉弾戦で勝ち続け、チームを鼓舞。PKを取られたシーンはあまりにもきびしい判定だった。
6 ビヨル 8(■106分)
フィジカルに頼らずインテリジェンス溢れる冷静な守備がとにかく光った。空中戦も含めて対人戦に強く、裏を取られる事は一度もなかった。ロナウドをタイトなマークで試合から消した。ボールのみを刈り取る優雅な守備はアレッサンドロ・ネスタを想起させた。
3 バルコヴェツ 7(■107分)
スピード不足から前半はカンセロに切り込まれるも、修正後はクレバーかつ寄せの早い守備で自陣左サイドを完璧に守り切った。予想以上のパフォーマンスを見せていた。
MF
20 ストヤノヴィッチ 6・5 (86分→交代)
得意の攻撃スキルは披露できなかったが、前半にやられていたメンデスとレオの対応を後半に修正し、彼らのスペースをブロック。戦術理解度の高さを示した。
→7 ヴェルビッチ 5・5 (86分→出場)
持ち味の攻撃力は活かしきれなかった。
22 チェリン 7
一体どれだけ走ったのか。魂溢れるデュエルで常にチームの士気を高めていた。
10 エルシュニク 7 (106分→交代)
チェリン同様とにかく走った。ボールホルダーへの果敢なプレッシングで対峙する相手の持ち味を封殺した。
→26 イリチッチ ー (106分→出場)
17 ムラカル 6・5 (74分→交代)
守備で個上kン。後半にカンセロを監視し、仕事をさせなかったことは評価に値。
→5 スタンコヴィッチ 6・5 (74分→出場)(■101分)
守備でのタスクを忠実にこなした。自陣ボックス内まで戻り、とにかく守った。
FW
11 シェシュコ 5・5
ペペとのバトルは見応え十分。60分には単独突破をしゴール前に迫ったが、ペペを完全には振り切れなかった。延長後半のGKと1対1のチャンスは決めたかった。
9 スポラル 5・5 (75分→交代)
くさびとなる動きを駆使し、相手のCBと闘った。献身性は光ったが、もうひとつ攻撃で貢献したかった。
→19 チェラル 5・5 (75分→出場)
ボールを引き出しつつ果敢にプレスバックを行った。攻撃の貢献度が今一つか。